金の多面的な側面

ドル建ての金価格の動きを見ると、1オンス35ドルから197ドルへの上昇、一転して103ドルへの下落、103ドルから850ドルへの高騰、そして281ドルのボトムへ、次に502ドルへ上昇の後326ドルへの下落、という具合に乱降下しました。

一方、円建ての1グラム当たりの価格の動きを見てみると、為替相場が1ドル360円から80円へと円が4倍以上に強くなったプロセスで、円が円安にふれるタイミング等により、金価格の変動幅はドル建て価格の変動と比較にならないくらい上下に揺れ動きました。
1グラム825円から2020円へ急上昇の後、半値の1005円へ急落、80年1月には6495円と6.5倍の急騰の後、一度2451円まで下落して、4184円まで戻したかと思ったら、あとは円高のペースに合わせて、とうとう大きな戻りも見せずに1019円と、約19年前の1005円とツラ合わせの水準になってしまいました。
こうした金価格の変動の激しさに、つい金の価値まで下がってしまったのかと錯覚させられてしまいます。

金の本質つまり金の価値は数千年の間にいささかも変化していません。
しかし、金の価格は、商品としての金という性格が人々に強く認識されるようになるとともに、その変動幅を増大させてきました。
金の価格は、ある特定の時に他の財貨と交換する場合の通貨という物差しで計った量目です。

金はもともと多面的な要素を持っています。
従来、金の多面的な側面はまず「通貨としての側面」、2番目に「産業用素材としての側面」、3番目に「財産保全の手段としての側面」としてとらえられるのが一般的でした。

しかし、急激に起こった価値と価格の分離現象を理解するには、このような70年代までの金への理解の仕方では不十分なのです。
80年代以降の金の動きは、「通貨としての金」「商品としての金」、そして「武器としての金」という3つの視点から見るととても理解しやすいのです。
この3つの分類方式にしたがって、価値と価格の分離の動きと、その背後の要因を探ってみましょう。

価値と価格の分離現象が生じたのは、1934年にルーズベルト大統領によって1オンス35ドルに固定された金が、金と取り巻く環境の変化に伴って、政治的に決められた35ドルという価格のワクに収まらなくなってきたからです。

第二次大戦後の度重なる通貨危機に際して、1961年以降アメリカと西欧7カ国は金プール制をとり、共同して金と出し合い、固定された金価格の維持に努力してきました。
しかしついに金の売り支えができず、1968年3月に金プール制を廃止しました。
ここに価格を不当におさえられた金の内在するエネルギーが爆発したのです。